TOP 活動報告 東アジア圏日本近代文学者の研究成果―デジタル資料の活用から― 増田 周子

活動報告

UNIT 22021.04.21

東アジア圏日本近代文学者の研究成果―デジタル資料の活用から― 増田 周子

作家の未公開資料やアジア・太平洋戦争と戦後問題の研究

私は、東アジア圏近代文学者の研究を行っています。
特に注目しているのは、火野葦平と大阪作家全般(藤澤桓夫、織田作之助、宇野浩二ら)です。
KU-ORCASでは、デジタル資料の活用を重視しているため、増田も作家の未発表資料である書簡、日記、写真、創作ノート、文壇資料などを収集し、自身でデジタル化して研究を進めています。
例えば、火野葦平とドナルド・キーンの交流を、米国コロンビア大学から火野のキーン宛書簡を取り寄せ、デジタル化して考証しました。

さらに、火野の未公開『従軍手帖』の翻刻、戦後のアジア諸国会議の諸相や、新中国訪問の『日記』を翻刻し、その折の写真もデジタル化し、東アジアの戦争と戦後問題の研究を行いました。

近年は火野がインパール作戦に従軍した時に出会い、日本に持ち帰るように託された第33師団(弓)の指揮官田中信男中将の『陣中日誌』を翻刻公開し、『戦ひの記』(2019年、関西大学出版部)として出版しました。陸軍中将の苦悩やインパール作戦の悲惨さが分かる貴重な史料です。
現在は、藤澤桓夫のネットワークから大阪文壇研究をするため、2020年に本学に寄贈された古家新の風流座関係資料をデジタル化し、研究を進めています。
いずれも、未発表資料に基づく研究成果であり、新たな発見にわくわくしています。

『戦ひの記』昭和19年6月8日

大阪文士劇「風流座」舞台写真