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活動報告

UNIT 12021.04.21

敦煌文書を起点とする漢語史研究 玄 幸子

敦煌文獻に関する文献学・学術交流を視野に入れて

 

中国口語の通時研究を第一の研究テーマとしていますが、口語の分析・研究の歴史自体がまだ新しく、その黎明期からせいぜい100年余りしか経っていません。中国語の悠久の歴史から見ればまだまだ始まったばかりともいえます。そもそも文言至上の観念を持つ漢語において口語の歴史をたどる発想自体が新しいともいえましょう。
その中で口語史研究を可能にしその契機ともなったのが敦煌文書の発見でした。膨大な口語史料が書写された当時のままの姿で同時資料として出現したことにより中国口語研究が飛躍的に発展したともいえましょう。

然しながら一方で写本を読み解くことの難しさがあり、真偽問題を含む史料の同定・整理が欠くべからざる前提となります。
よって、語学的研究と並行してトンコイズムという用語の創始者でもある内藤湖南蒐集の資料の整理、草創期敦煌学の状況の把握なども視野に入れた研究を進めています。

2020年度は特に内藤湖南文庫に収蔵される敦煌写本の写真やロトグラフの把握・整理に努め、年度内のweb公開を準備中です。さらに本学東西学術研究所の創設者でもあり、湖南の英仏渡航に随行し敦煌写本の調査を進めた石濵純太郎博士にかかる大阪大学図書館石濵文庫の未公開書簡資料を調査し、當時の学術界の交流の実情を見ることが出来ました。

既出版関連書籍

 

内藤文庫所蔵 S.525 写真資料