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活動報告

UNIT 42021.04.19

古典籍資料の情報資源化 菊池信彦

廣瀬本万葉集の翻刻とTEIマークアップデータ作成

 

ユニット4では、本学が所蔵する廣瀬本万葉集を対象に、翻刻とTEI/XMLマークアップを行っています。
万葉集には、その伝来史上様々な写本が存在していますが、現存する完本のほとんどが鎌倉時代の僧仙覚が諸本を校合して作成した「仙覚校訂本系統」に属しています。しかし、廣瀬本万葉集はそれとは異なる「非仙覚本系統」の唯一の完本として、万葉集研究上特異な地位を占める資料です。また、その奥書から、この廣瀬本万葉集は新出の定家本万葉集として大きな話題となるなど、その資料的価値が極めて高いことが知られています。

KU-ORCASが運用している関西大学デジタルアーカイブでは、この廣瀬本萬葉集の画像データをすでにパブリックドメインで公開しています。私たちの研究ユニットではさらに、本学での今後のデジタルヒューマニティーズ研究の進展を見据えつつ、その研究素材と基盤形成を目指して、この廣瀬本万葉集のテキストデータ(翻刻)の作成とTEI(TextEncodingInitiative)マークアップ化を進めています。
ここでいうTEIとは、国際的な人文学資料のマークアップルールであり、欧米の研究者を中心に人文学研究資料の電子編集のために生み出されたもので、現在はXML技術をベースに開発が続けられているものです。
TEIは人文学研究資料のテキストデータを作成する際に採用される国際的なデファクトスタンダードとして位置付けられているため、これを採用することで、世界標準のデータ作成を実現することができます。
データの作成は廣瀬本万葉集の巻2から取り掛かっており、昨年度と今年度でその半ばまで終えました。
次年度は外部資金の獲得を前提としつつ、さらに翻刻とTEI化を進めていく想定です。