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活動報告

UNIT 22020.03.23

2019年度ユニット2活動報告「泊園書院と大坂画壇」吾妻重二

ユニット2は「東アジアの中の大阪の学統とネットワーク」をテーマとしており、その活動の大きな柱は大阪の漢学塾「泊園書院」の研究と、大坂画壇のアーカイブ構築の二つにあります。

 

1.泊園書院の研究とアーカイブ構築

 

2019年春、「泊園文庫デジタルアーカイブ」および「泊園印章デジタルアーカイブ」をKU-ORCASホームページで公開しました。まだ試用版の段階ですが、現在最も汎用性のある画像データベース・システム「IIIF」(トリプルアイエフ)に搭載したものです(https://www.iiif.ku-orcas.kansai-u.ac.jp/)。

今回公開したのは泊園文庫全17,717点のうちの一部にすぎませんが、今後いっそうの充実をはかっていきます。また印章は日本近世・近代における印章の一大コレクションで全178顆。羽倉可亭、円山大迂ら幕末・明治期の名篆刻家の作品を含みます。画像撮影・釈文などすべての作業が終了しており、そのほとんどを今回公開しました。

このほか、2018年10月に開かれたシンポジウムの論文集『東西学術研究と文化交渉――石濱純太郎没後50年記念国際シンポジウム論文集』(関西大学出版部)を2019年11月に刊行しました。近代東洋学のパイオニアであり泊園書院にも深くかかわった石濱の業績に関して日本や中国、ロシアなど内外の研究者19篇の論考を収め、充実した内容となっています。

『東西学術研究と文化交渉――石濱純太郎没後50年記念国際シンポジウム論文集』

 

 

 

2.大坂画壇のアーカイブ構築

 

大英博物館(British Museum)と京都国立近代美術館、そしてロンドン大学およびKU-ORCASとの共同企画展覧会の構想にもとづき活動を展開しました。

2019年4月にロンドンの大英博物館において日本美術部のティモシー・クラーク氏主宰の作品調査会が行われ、ロンドン大学で研究集会「大坂と京の文化とデジタル化」を開催しました。さらに2019年8月にも東西学術研究所国際シンポジウム「大坂画壇と京の文化をめぐる研究と展覧会企画」を本学で開催し、好評を博しました。

このように、日本とイギリスのスタッフの協力による研究集会が開かれ、企画についての研究蓄積を重ねて成果を上げてきました。

本学には約700点の大坂画壇の絵画作品が所蔵されていますが、ロンドンの大英博物館にも、約2万5千点を越える日本美術作品が収蔵されています。そこには、大坂を代表する知識人の木村蒹葭堂周辺の画家たちの絵画も多数含まれています。この大坂画壇の作品群を日本に借用して「大坂画壇と京の文化サロン」(仮称)展を開催する構想も現在進んでいるところです。

 

大英博物館での調査風景