2020年度 KU-ORCAS国際シンポジウム

デジタルヒューマニティーズ
推進のための環境構築と
その課題

今回の国際シンポジウムでは、デジタルヒューマニティーズの推進において先導的な活動を展開している国内外の機関を招待し、各機関で収蔵されている資料の特徴や開発の経緯、プラットフォームの機能やそれを実現するための技術、利活用の取り組み、今後の課題などが披露されました。デジタルヒューマニティーズの推進のためには各機関 の取り組みの内容や目的を際立たせつつも、連携を深めていく必要があることを再認識しました。

Inline content

史的文学DBとその利活用について

馬場基

馬場 基

奈良文化財研究所 都城発掘調査部史料研究室 室長

史的文学DBとその利活用について

日本木簡研究のハブ的存在である奈良文化財研究所が、モノを扱う機関としてどのような経緯で史的文字の開発に至ったかが紹介されました。同時に、こうした大型DBの構築に必須となる他機関との連携関係のあり方について、その基本的ポリシー も含めて共有すべき方向性が示されました。

簡牘字典と史的文学DBおよび中央研究院におけるデジタルヒューマニティーズの研究環境の取り組み

劉欣寧

劉 欣寧

台湾 中央研究院歴史語言研究所 助研究員

簡牘字典と史的文学DBおよび中央研究院におけるデジタルヒューマニティーズの研究環境の取り組み

上述の奈良文化財研究所の連携機関の主担者である劉欣寧先生からは、歴史語言研究所の所蔵する漢代木簡の画像データベース(簡牘字典)の構造と機能が紹介されました。世界に先駆けて中国古典籍のテキストデータベースを構築・公開してきた同研究所の経験と実績を踏まえ、今後の規範となるデジタル字典の姿が示されました。

漢学デジタル人文共通プラットフォームの需要と設計
The Functional Requirement and Designing of a Universal Digital Humanities Platform for Sinology

劉煒

劉 煒

上海図書館副館長

漢学デジタル人文共通プラットフォームの需要と設計
The Functional Requirement and Designing of a Universal Digital Humanities Platform for Sinology

中国で最も先進的であ る上海図書館のデジタルヒューマニティーズ の取り組みについて、その背景にある理論的 根拠と実際の状況、ネットワークや IIIF の 採用等詳しい報告が行われました。デジタル ヒューマニティーズへの貢献についても話が 及び、極めて示唆的で有意義なものでした。

歴史ビックデータ研究基盤のための デジタルツールと相互運用

北本朝展

北本 朝展

ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター センター長/国立情報学研究所 教授

歴史ビックデータ研究基盤のための デジタルツールと相互運用

デジタルヒューマニティーズの両輪のひとつである情報学の立場から、さまざまな手法を活用した研究事例が紹介されました。「こうした情報学との協業は、人文学のスピードとスタイルを変える」という指摘は、人文学研究者にデジタルヒューマニティーズの価値を改めて認識させるものでした。

「データ駆動による課題解決型人文学の創成」事業に向けて

山本和明

山本 和明

国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター長

「データ駆動による課題解決型人文学の創成」事業に向けて

これまで多くの大型プロジェクトを主導してきた国文学研究資料館 が今般スタートさせた上記事業についての紹介がなされました。とりわけ、我が国の人文学者の大型資金獲得に対する姿勢についての指摘は、本シンポジウム最後の総合討論に、刺激的な論題を提供するものとなりました。

オブジェクトを活用した学びをデザインする:慶応 義塾ミュージアム・コモンズにおける

本間友

本間 友

慶応義塾大学ミュージアム・コモンズ専任講師 アート・センター所員

オブジェクトを活用した学びをデザインする:慶応 義塾ミュージアム・コモンズにおける

本年4月にオープンする慶應義塾大学ミュージアム・コモンズ(KeMCo)の活動が紹介 されました。デジタル環境を利用して同大学が保有する多様な文化コレクションおよび、それを所管する組織を結びつける様々な興味深い企画とともに、それを教育につなげていく着想は、デジタルヒューマニティーズの新たな可能性を示すもので、非常に魅力的で示唆的な構想であることが了解されました。

東京大学デジタルアーカイブズ構築事業の取り組みとその利活用について

中村覚

中村 覚

東京大学史料編纂所 助教

東京大学デジタルアーカイブズ構築事業の取り組みとその利活用について

史料編纂所だけでなく東京大学全体のデジ タルアーカイブズ構築をめざす同事業が紹介 されました。特定部署による学術資料のデジ タル化が個別分散的に進められている現状に おいて、大学全体としてのアーカイブ化構想 を打ちだした先導的取組は、本学 ORCAS も 含めた多くの関係者にとって、有力な羅針盤 となるものでした。

国際シンポジウム

研究集会