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活動報告

UNIT 12018.12.01

「2018年度活動報告」 奥村佳代子

活動状況

 

本年度の活動は、第一にアーカイブ構築に向けた準備作業を開始しました。
近代中国語コーパスに関しては、問題点を整理し再整備に着手し始めました。次年度内に本学所蔵鱒沢文庫の文献を新たに加えた上で公開を再開することを目標としています。

本学所蔵資料のアーカイブに関しては、現有データを調査したところ、新たに総合図書館所蔵の資料を追加することになりました。目録調査と図書館での実地調査を行い、採録が確定した資料から順次撮影及びテキスト入力作業に着手します。

テキストデータを構築するにあたり、10月13日に開催されたKU-ORCAS主催TEI一日講座にユニット1のメンバーは積極的に参加しました。まだ試行段階ではありますが、TEIをテキストデータ作成の基礎とする予定です。また、来年度、東アジア文化研究科にTEIを学ぶための科目を置き、人材養成を目指すことになりました。

第二に、国際学術会議を開催しました。中国語教育史研究の分野における「デジタル化」に対する認識と可能性を深める、貴重な機会となったのではないかと思います。

10月20、21日開催の主催国際学術シンポジウム「デジタル化時代におけるグローバル中国語教育史国際シンポジウム」は、中国北京を拠点とする世界漢語教育史の第10回大会として初めて日本で開催され、中国と日本の研究者44名が研究発表を行い、活発な討論が展開されました。

特に、ハーバード大学東アジア言語文明系フェローDonald Sturgeon先生による基調講演「数字人文与漢学教育:挑戦和機遇」(「デジタル人文学と中国学教育:チャレンジとチャンス」)は、ご自身のctext.orgについて、その成り立ち、考え方、それのもたらす研究の発展と深化、さらには必要とされる人材の育成に至るまで、デジタル人文学を取り巻く現状を全面的かつ具体的に掘り下げた内容でした。シンポジウムの参加者の多くは文献資料を研究対象とする個人でしたが、質疑応答の際には、すでに公開されているデジタルアーカイブの恩恵にただ与るだけでなく、テキストデータの作成や資料の公開の方法に関する具体的な質問がなされ、提供する側になることを視野に入れた発言が目立ちました。

大阪大学文学部教授田野村忠温先生による基調講演「指称漢語的諸名称-它們的歴史与用法差異」(「漢語を指す呼称-その変遷と用法の違い-」)は、デジタルアーカイブと書籍資料の両方を適切に活用することによって可能となる研究モデルとも言うべき内容で、今後の研究の可能性を示されました。

北京外国語大学全球史研究院李雪涛教授とKU-ORCASセンター長内田慶市教授が、9月4日に近代東西言語接触研究センター(近代東西語言接触研究中心)の設立準備としてワークショップを開催、12月22日に正式にセンターを設立、合同主催で開設記念となる学術会議が北京外国語大学で開催されました。今後、デジタルアーカイブに基づいた研究の充実が期待され、KU-ORCASの果たす役割は大きいと言えます。

また、11月10日に東西学術研究所との合同ワークショップ「日中自然言語処理に関して」を開催しました。国立国語研究所教授小木曽智信先生「古典日本語テキストの形態素解析」と題して講演され、ユニット1メンバーの目白大学講師氷野善寛先生が「中国語と形態素解析」と題して研究発表を行いました。

以上が本年度の主な活動状況です。

基調講演1

基調講演2

漢語教育史研究学会集合写真

 

 

今後の予定(今年度の反省点)

 

講演や研究発表、勉強会を通じて、デジタルアーカイブの必要性と構築法を学ぶ活動は実績を積みつつありますが、今後はKU-ORCAS独自のアーカイブ構築に向けてより重点的に取り組みたいと思います。

次年度以降の計画は以下のとおりです。

2019年度

⑴近代中国語コーパスの資料の補充とテキストデータ作成、「新版近代中国語語彙コーパス」として、一部公開を再開する。

⑵本学総合図書館所蔵資料の撮影とテキストデータ作成を開始する。

⑶西洋料理に関する近代中国語資料の解読を進める。

2020年度

⑴「新版近代中国語語彙コーパス」の整備を進める。

⑵本学総合図書館所蔵資料の撮影とテキストデータ作成を開始する。

⑶西洋料理に関する近代中国語資料の解読を進める。

2021年度

⑴「16世紀以降東西言語文化研究総合アーカイブ(仮)」の運用開始、完成を目指す。

⑵オープンプラットフォームによる近代概念史研究に関する特別研究集会を開催する。